カヴェンディッシュ劇場

唖然とするスペイン記者たちを尻目にカヴェンディッシュが一人芝居で突っ走る。カタルーニャ一周で区間優勝したときのこと。ゴール手前3km、集団落車で目の前に人が横たわっていた。それをジャンプしてかわしたカヴェンディッシュ。その次にレラックスの選手が呆然と突っ立っていた。しかもゴールと逆の方をぼけーっと見つめながら。カヴェンディッシュは、そのときの様子をジェスチャーをまじえて再現する。席を立ち、レラックスの選手の真似をする。「そしてボクは叫んだ、”みんな動けー”!」。「そうやって混乱の中、ボクはいいポジションを得て優勝にこぎつけたんだ」。ここは記者会見場。立ち上がって再現ドラマを一人芝居する若者の姿に、記者たちは頭の中が???でいっぱいになる。でもそんなことはお構いなし。カヴェンディッシュは記者たちに便宜を図るためというのではなく、自分のアドレナリンを沈静するためにこうして息まいているのだった。ちなみにTモバイルの幹部は、「カヴェンディッシュのすごいところは、他人についても配慮できること。自己中心ではない」とも。好感度がまた上がった。今月号のCSから。